6月9日付けの東奥日報に、
これまた衝撃的な記事が取り上げられていた。
「青い森鉄道 高卒応募ゼロ」
※そりゃぁ経営者の顔も車両の車体も青ざめる訳だ()
青い森鉄道と言えば、
当ブログではもはやお馴染みのネタとなっているが、
ご存じの通り、
東北新幹線全線開業によって、
旧東北本線から経営分離された第三セクター鉄道である。
また、第三セクター鉄道では珍しい、
上下分離方式を採用しており、
事実上のオーナーは青森県となっている。
これにより青い森鉄道の経営は、
コロナ禍に突入する前は毎年順調に推移し、
コロナ禍においても線路使用料を青森県に減免してもらったことで、
3年連続実質黒字を達成しているという、
全国の第三セクター鉄道界隈では、
成功例として取り上げられているほどだ。
そのような良質な経営体制をとっている青い森鉄道ですら、
高卒者の応募が1人もいなかったというのは、
個人的にも衝撃な内容である。
◆青い森鉄道の新卒者推移
年度 | 高卒者 | 合計 |
2020 | 3人 | 9人 |
2021 | 2人 | 14人 |
2022 | 1人 | 7人 |
2023 | 0人 | 7人 |
2024 | 0人 | 10人 |
そもそも青森市内区間に至っては、
沿線に多数の高校が集中していることから、
高校生にとっては毎日利用する路線であり、
むしろ身近に感じているものであると思われていた。
しかしながら、やはり県外(主に東京方面)の優良企業の待遇に目が奪われ、
そちらのほうに応募する高校生が多いという。
“これではいかん”ということで、
青い森鉄道では早速来春から初任給を引き上げるという。
具体的には、初任給調整手当を現状より倍となる18,000円に拡大し、
月給を16万300円に設定するとのことだそう。
参考までに厚生労働省のデータを持ってきた。
月給を上げるとはいえ、
令和5年度時点においても全産業と比べれば1万円強、
同じ運輸業では数千円低いのが分かる。
またこれに加え、受験者の負担を減らすべく、
教養試験を廃止するほか、
高校への訪問も例年より1~2年早い4月から始め、
頻度を増やすようだ。
ただ、個人的にひっかかる点として、
記事によれば主に工業高校を中心に訪問しているとのことだが、
そもそも鉄道の仕事というのは工業系だけではない。
確かに、車両整備や保線といったジャンルに関しては、
やや工業系の要素が強い職種である。
しかし、会社経営の中枢を担う本社の仕事は、
いわゆる事務系だ。
事務系と言えば経営戦略は勿論のこと、
経理や総務、人事など、
文系だけでなく工業系が活躍できる幅広い職種も山ほどある。
とは言え、そもそも車両整備や保線といった、
いわゆる体力系のブルーカラーの職種の応募が減っているが故、
工業系の高校にアタックしているのと思われる(文系の高校にも積極的に訪問したかは不詳)。
個人的に一つ提案としてだが、
まず、高卒者に対し先述の事務系の職種で採用させ、
仕事をこなしていくうちに、
次第に工業系の職種にも自然と興味を持ってもらう、
というような流れを作ると少しは変わるのではないだろうか?
誰もが最初は大なり小なり、
自分が入った職種で合っているのだろか・・・
と疑問や不安に思うはずだ。
しかし、一回会社に入社してしまえば、
あとは自分次第の提案や努力で何でもできる。
要は、職種変更などだ。
例えば、自分は最初経営担当として入ったが、
鉄道マニア向けのイベント開催や、
各所への挨拶回りや出張、
自社の売上などを精査していくうちに、
“実際にお金を稼ぐ列車”の運転士を目指してみようか・・・
その列車を毎日安全に運行させるために車両整備をやってみようか・・・
というような人材も今後現れてくる可能性もある。
最初は否定的な考えだったのが、
仕事をこなしていくうちに、
興味の無かった分野の職種にもチャレンジしてみようか、
という流れや体制を社内で作ってみてはどうか。
これは鉄道だけでなく、
バスやタクシー、航空、船会社などにも当てはまるものと思われる。
最初は事務の仕事を務めたが、
やっぱり遷り変わる景色を見ながら仕事がしたい、
という意思から運転手などに職種変更した人も一定数はいる。
その辺を工夫すれば、
「青い森鉄道に応募してみようか」
という高卒者も出てくるのではないだろうか。
あとは、やはり業種のイメージも要因と思われる。
昨今の鉄道の在り方を考える再構築協議会が全国で開かれ、
人口減少によって鉄道の利用者が減る、
次第に廃線まっしぐら、
というイメージが世の中にあふれている。
直近では津軽線の蟹田以北の廃線も確定したことから、
より一層、青森県内の学生は鉄道に対し、
安定しない業種と思われているのだろう。
ただ、一つ言える点として、
冒頭でも解説したが、
青い森鉄道は事実上のオーナーが青森県であるため、
少なくとも青森県が某○張市みたいに財政破綻しない限り、
潰れることはまず考えられない。
また、貨物列車が通過する大動脈でもあるため、
JR貨物からの”美味しい”線路使用料もたくさん入ってくるなど、
全国的に見ても非常に好条件な経営体制なのだ。
もしこの記事を読んでいる学生諸君は、
当ブログのシリーズ企画「青鉄大研究会」を併せて熟読していただきたい。
いかに青い森鉄道がいい意味でカオスかが分かるだろう。
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