【青鉄大研究会part8】三セク初の上下分離方式採用で青い森鉄道は成功した!?

交通研究

連日お伝えしている青鉄大研究会シリーズ。

今回はその中でも青い森鉄道にとって一番コアな部分と言っても過言ではない、

「上下分離方式」という経営方式について取り上げていきたいと思います。

勿論、今後もいくつかのパートに分けて青鉄大研究会は続けてまいりますが、

それらも含め今回の「上下分離方式」というのは最もカギとなるであろう項目です。

むしろ青い森鉄道は「上下分離方式」を採用したからこそ上手くいっていると言っても過言ではないでしょう。

ということで早速解説に入ります。

まず「上下分離方式」とは、

鉄道や道路、空港といった交通事業を運営していくうえで、

インフラ(施設)部分に相当する「下部」と、

運行・運営に相当する「上部」を行う組織を切り離し、

下部と上部を独立させる方式のことを言います。

鉄道の場合は事業を運営していくために、

車両、線路、トンネル、架線といった鉄道資産が必要であるとともに、

ほかの民間企業と同じように運営していくための”組織”もなくてはなりませんよね。

「上下分離方式」ではこれらを区分け(経営を分け合いっこ)して運営を図っていくという方針です。

青い森鉄道も含め一般的には、

自治体といった公的機関が土地や施設などの資産(下)を保有し、

それを民間企業や第三セクターが借りて運行・運営(上)だけを行うことが多くなっています。

でも、経営を分け合いっこすることによって、

色々と面倒なことが起こりそうな感じがしますよね。

そもそもなぜ「上下分離方式」を採用するケースが増えているのかというと、

要は鉄道といった交通事業者単体では経営が難しい状況にあるためです。

先述の通り鉄道事業の場合は運営していくための組織に加え、

車両、線路などのインフラ部分も必要不可欠になってきます。

しかし、もとから利用者数が少ない鉄道事業者がそれらすべてを受け持つとなれば、

経営をひっ迫することで相当の負担となります。

ましてや鉄道は地域住民の足を担う役割があり、

普段利用している人にとって廃止されては到底困りますよね。

そこで鉄道事業者の負担を軽減させるべく発明された案がこの「上下分離方式」なのです。

鉄道施設(下)の維持を代わりに沿線自治体にしてもらうことで、

鉄道事業者は車両の運行等(上)だけで済み、

維持費を軽くすることが可能になるというものです。

※第〇種鉄道事業者の詳細についてはまた今度お伝えします。

青い森鉄道の場合は駅舎・ホーム、線路、電気設備の鉄道施設(下)を青森県に維持してもらって、

車両の運行や保有(上)に限り自社で行うことになっています(ただし青い森703系の1編成は青森県からリースしている)。

青い森鉄道は当初から利用者数が少ないことが見込まれていたため、

2002年の開業時から既に「上下分離方式」を採用していました。

その分青森県の負担も増えましたが、

しかしながら現在の青い森鉄道の経営状況は大幅に改善されており、

以前解析した営業係数についても年々100から遠ざかっていくようになりました。

逆にこの「上下分離方式」を採用したことで青森県との関係も深まり、

ダイナミックに県立高校を駅チカへ移転させて利用者数増加を図るなど、

何とも融通の利く経営戦略へと変革していったというわけなのです。

これこそまさに「官民連携」の賜物だと思いませんか?

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