【青鉄大研究会Part19】そもそも貨物調整金はどこから発生しているのか!?

交通研究

毎度ご覧いただきありがとうございます。

今回もこのシリーズではもはやお馴染みとなった貨物調整金についてフォーカスを当てていきますが、

貨物調整金絡みの話は遂に終盤を迎えているところであり、

今回でお開きといったところでしょう。

とは言え、これまでいろいろご紹介してきたように、

青い森鉄道とJR貨物は切っても切れない関係、

つまるところ表裏一体の関係といっても過言ではないほど、

両者の関係性は実に深いものだということが浮き彫りになりました。

さて、今回も貨物調整金について話を進めていきますが、

しかしながら、これに対してふと疑問に思ったことはありませんか?

並行在来線事業者への支援として当てている貨物調整金ですが、

そもそもそのカネはどこから来ているのでしょうか?

最初に答えを言ってしまうと、

貨物調整金の原資となるのはJR旅客会社となります。

※JRTT…Japan Railway Construction, Transport and Technology Agency 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(略称:鉄道・運輸機構)

※小津茂樹(財)運輸調査局)(2003)新幹線の開業および延伸に伴う貨物輸送の線路使用料問題<https://www.jstage.jst.go.jp/article/koutsugakkai/47/0/47_49/_pdf>から引用・加工

上図を見ると一目瞭然でしょう。

つまり貨物調整金はJR旅客会社から徴収する整備新幹線の貸付料から来ているのです。

なぜJR旅客会社が貸付料を鉄道・運輸機構に対し払っているのかというと、

東北新幹線盛岡~新青森間をはじめとした整備新幹線というのは、

実質JR旅客会社の所有物ではないからです(但し、開業から30年が経ったらJR旅客会社の所有になる)。

※総務省自治財政局調整課課長補佐 八矢 拓(2015)「整備新幹線について」<https://www.soumu.go.jp/main_content/000357377.pdf>から引用・加工

要は青い森鉄道でもお馴染みとなった「上下分離方式」をここでも導入しているのです。

新幹線の建設は膨大な費用がかかることで、

JR旅客会社は新幹線の運行のみに専念し、

鉄道・運輸機構が代わりに鉄道施設の維持を行っています。

そしてJR旅客会社から徴収する貸付料が貨物調整金に充てられるということなのです。

※小津茂樹(財)運輸調査局)(2003)新幹線の開業および延伸に伴う貨物輸送の線路使用料問題<https://www.jstage.jst.go.jp/article/koutsugakkai/47/0/47_49/_pdf>から引用・加工

いかがでしょう。

青い森鉄道をはじめとする並行在来線事業者への線路使用料の支払いの内訳としては、

1.JR貨物からの線路使用料

2.鉄道・運輸機構からの貨物調整金(JR旅客会社から徴収した貸付料)

以上の2費目で成り立っているのです。

そして上図の通りJR貨物からの線路使用料はわずか3分の1程度しかなく、

いかに鉄道・運輸機構からの貨物調整金に依存しているかが分かります。

しかし参考文献として挙げた小津氏の見解によると、

「JR貨物の支払う線路使用料は必ずしも少ないとは言えない」

と述べています。

その理由としては、並行在来線事業者所有の線路における財産権や所有権は、

あくまでも旅客会社にあって、

貨物会社には存在しないからです。

つまり、並行在来線事業者所有の線路は、

JR貨物と並行在来線事業者所有の共有財産でないため、

線路の維持管理等の費用は所有者である並行在来線事業者が負担し、

JR貨物は貨物列車を走らせた分に応じた費用だけを負担するのがどちらかと言えば適切であると述べています。

なので、JR貨物が並行在来線事業者の固定費を支払うのは必ずしも合理的とは言えないのではないか?

と見解を示しているのです。

とは言え、ほとんどの並行在来線事業者は経営的にも余裕がないどころか、

特に青い森鉄道は1日当たりの貨物列車本数が50本もあり、

旅客列車と遜色ないほどの本数であるため、

アボイダブルコストルールだけで算出した線路使用料だけだと足りないことは理解できます。

なので並行在来線事業者の負担を軽減させるために、

貨物調整金が誕生したということですね。

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