県都青森市と下北半島を結ぶ貴重な交通機関が一つ消滅することになる・・・
青森~脇野沢(むつ市)~佐井を結ぶ”離島航路”「シィライン」が、
2023年3月末をもってBAN(廃止)されることが、
5月26日の株主総会で決定してしまった。
2014年度は約1万3100人の利用があったのだが、
それをピークにみるみる減少。
2021年度の利用者数はコロナによる集客減が大きく影響し、
何と約1900人まで激減してしまったのである。
パーセンテージで算出すると大体2014年度の15%ほど。
いかに青森~佐井航路は観光依存が大きいかが伺えるだろう。
とは言え、観光依存に陥るのも無理はない。
下北半島有数の観光地として知られる、
佐井村にある仏ヶ浦を海から見たいとなれば、
シィラインから眺望することができる。
青森市からだと1時間50分程度で到達可能。
一方、車でアクセスするとなれば、
国道338号を”通らなければならない”。
というのも、この国道338号が非常にクセモノであり、
脇野沢・佐井村周辺は狭隘区間となっている。
また、全体的にくねくねした道のりであり、
スピードが出しにくいためその分時間が延びる。
更に、佐井村区間は狭隘区間+勾配の激しい区間となっており、
更に所要時間がかかってしまう。
しまいには、脇野沢-牛滝(佐井村)間は冬場通行止となるほど脆弱。
車だと3時間40分もかかる。
よって、シィラインのHPでもフェリーを使ったほうが断然速いと猛アピール。
また、脇野沢-牛滝(佐井村)間が冬季通行止めであるため、
住民の生活道路としての役割は万全に果たせていない。
脇野沢、佐井村エリアはまさに「陸の孤島」と化していた。
そのため、シィラインは全国で唯一、
離島航路として国が特別に認めたのである。
本土と繋がっているにもかかわらず離島航路扱い・・・
これがシィラインの真骨頂であった。
言い換えれば、国道338号があれだけ脆弱なため、
シィラインはこれまで何とか生き残ってきた。
しかしながら、依然として人口減少&モータリゼーションからは避けられず、
そこにコロナの集客減が襲い掛かったため、
廃止に追いやられてしまったのである。
一方、利用者からは欠航率が高いという声も見られる。
記事を書いている本日5月31日は県内各地雨だったが、
大雨ほどではない。
が、HPを見ると全便欠航となっていた()
船体が大きいと雨の影響は小さいのだが、
いかんせんシィラインでは資金力的にも小型船が精一杯であるため、
安全を確保するためにも致し方ないことである。
小型船のため勿論車も乗り入れられない。
これも廃止に追いやられた理由の一つであろう。
あとは、シィライン自体の知名度がやや低いのも要因かもしれない。
1日2往復しか動いていないだけでなく、
青森ターミナルは青森駅北側にある八甲田丸の更に北側に位置しており、
目立った案内も無いため初見だとどこにあるか迷う人も出てくるだろう。
また、グーグルマップでも航路が反映されていない。
津軽半島と下北半島を結ぶむつ湾フェリーですら航路が反映されているのだから、
これでは県内外の観光客には分かりづらい。
一方、佐井村の職員からは、
「住民が使いやすいように出発時間や到着時間を調整したが効果はなかった」
「そもそも離島航路に収支を求めるのは無理がある」
とほぼ諦めの姿勢を見せている。
確かに脇野沢、佐井村エリアだけでは人口も少なく、
マーケットとしても小さいため無理はない。
だったら、下北半島の中心であるむつ市中心部と青森市を結ぶ高速船に切り替えた場合、
どの程度需要があるのだろうか?
要するに、航路変更である。
シィラインや佐井村の職員はこの案を勘案したのか不明だが、
むつ市中心部なら人口は圧倒的に多く、
マーケットも大きい。
実際、青森市からむつ市に行くとなれば、
鉄道を乗り継いでも2時間はかかる。
これがフェリーならどのぐらいの所要時間なのだろうか?
仮に鉄道乗り継ぎより時間がかかったとしても、
自動車を載せられる規模の船にグレードアップする&乗り換えなしで行ける、
ということを鑑みれば、
それなりの需要はあるのではないかと見る。
まあ最終的な判断はシィラインに委ねられるが、
航路変更も一案ではないかと思われる。
で、脇野沢、佐井村エリアとむつ市の交通網を強化するためには、
やはり高規格な道路を整備したほうが無難であろう。
むつ市にフェリーターミナルを造り、
そこから高規格な道路で脇野沢、佐井村エリアへアクセスする。
こういった案も捨てがたいのではないかと思われる。
とまあ、個人的にも案はまだ残されていると思うのだが、
果たしてシィラインはこのまま尽きてしまうのだろうか?
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