これまで実に28回にわたって解説してきた青鉄大研究会シリーズ。
遂に本日の投稿でラストとなります!
名残惜しいですねえ・・・
青い森鉄道と青森県との関係をはじめ、
上下分離方式の構図、営業係数の算出、ワンマン運転の実情、
それに貨物調整金及び線路使用料の仕組み等々・・・
特に貨物調整金及び線路使用料については大分しつこくやりましたねw
まあ、この部分は1回きりの説明だとなかなか理解するのが難しい話だったので、
貨物調整金及び線路使用料の話だけでも5~6回やった気がします。
ということで最終回は、
これまで青い森鉄道の経営戦略を調査して分かったことをまとめていきたいと思います。
青い森鉄道が成功した理由として、
以下の3つが主に挙げられると思われます。
上下分離方式の採用が経営のカギを握っている!?
まず、上下分離方式についてですが、
こちらも以前解説したように、
並行在来線における第三セクター鉄道では、
青い森鉄道が唯一この上下分離方式を採用しています。
振り返りになりますが、
上下分離方式とは、
駅舎、線路、架線といった鉄道施設(下にあたる部分)の所有を沿線自治体などに任せ、
車両の運行(上にあたる部分)のみを鉄道事業者が受け持つスタイルです。
青い森鉄道で言えば、
青森県が鉄道施設(下にあたる部分)の所有を、
青い森鉄道が車両の運行(上にあたる部分)のみを担っています。
で、上下分離方式を採用することでどんなメリットがあるのかというと、
駅舎、線路、架線といった鉄道施設は維持費に膨大なコストを要することから、
これをある程度の資金力がある自治体に維持を任せることで、
鉄道事業者は車両の運行のみに専念できるため、
経営的な負担が大幅に削減することができます。
青い森鉄道は並行在来線における第三セクター鉄道では全国で最も長い営業キロを擁しており、
利用者数もそこまで多くはないため、
駅舎、線路、架線といった鉄道施設の維持費だけでもかなりの負担がかかってしまいます。
そこを青森県が受け持つことで、
青い森鉄道の負担が大幅に軽くなったということです。
他の鉄道事業者(特に中小事業者)を見てみると、
やはり駅舎、線路、架線といった鉄道施設の維持費に苦しんでいるところが多く、
ましてや利用者数の少ないところでは維持費の影響で経営が火の車です。
俯瞰的に見ても、
青い森鉄道はこの上下分離方式を採用したことで成功したと言えるでしょう。
営業係数の面で見てもご覧の通り。
初期の頃は利用者数の少なさに悩まされていましたが、
全線開業以降本領を発揮し、
18期目は過去最高の黒字となっているのが分かります。
物流の大動脈を担っているからこそ成せた貨物調整金の増額!
次は、貨物調整金についてです。
青い森鉄道は旧東北本線でもあるため、
特急が走らなくなったとはいえ、
貨物列車については経営分離以降も変わらず毎日多くの本数が通過しています。
一方、先述の通り青い森鉄道は、
並行在来線における第三セクター鉄道では日本一長い営業キロを擁しているため、
貨物列車の走行によって線路の摩耗が早くなっています。
しかも、青い森鉄道の普通列車と比べ運行本数はそこまでの大差がないため、
およそ2倍のスピードで線路の摩耗が加速していることになります。
知事は以前、「単線非電化でも対応できる。JR貨物のために複線電化というコストのかかる設備を維持している」
と苦言を呈していたことを踏まえると、
いかに貨物列車による負担が大きいかがうかがえます。
そこで青森県はJR貨物に対し貨物調整金の増額を要請し、
鉄道施設を保有する青森県並びに青い森鉄道の負担を幾分か軽減させることに成功したのです。
まさにこれは、物流の大動脈を担っているからこそ成せた官民連携の技と言えるでしょう。
県立高校を駅チカに続々移転させ利用者数増加!
そして青い森鉄道の経営戦略を語る上で外せないのが、
県立高校を駅チカに移転させて利用者数増加を図ったというものです。
これも前回お伝えした通り、
上下分離方式をとっている関係で青森県とは何かと融通の利く仲であるため、
県立高校を青い森鉄道の駅チカに移転させ学生の利用促進を図るという魂胆です。
この戦術は他の鉄道事業者でもなかなか成せるものではありません。
上下分離方式をとっている青い森鉄道だからこそ発動できる、
いわば秘密兵器と言った感じでしょうかw
鉄道施設を保有しているのは青森県ですし、
人が乗らなければその分収入(青い森鉄道からの線路使用料)も入ってきません。
だからこそ本気になって利用者数増加を図ろうとしているのです。
発端は2011年の野内駅移転開業と同時に青森工業高校が駅チカに移転。
驚くべきは移転した距離が8.6キロという点。
もはや魔の力と言っても過言ではないほどの距離ですw
続いて2014年には青森高校付近に筒井駅を開業させ、
学生の利用促進を図りました。
その影響で筒井駅の利用者数も右肩上がりと好調であり、
隣の東青森駅を超えるまでに増えました。
2017年には廃校を活用すべく、
小柳駅付近に今度は青森商業高校を移転させました。
これにより小柳駅の利用者数も急増。
このように青い森鉄道と青森県がタッグを組んで、
県立高校を駅チカに移転させ利用促進を図るという、
何ともダイナミックなやり口を発動させたのです。
そして2025年には操車場跡地新駅設置が計画されており、
更なる利用増加が期待できるでしょう。
距離は多少離れていますが、
まさか今度は青森中央高校あたりにロックオンするつもりなのか・・・?
ただ、駅周辺に高校を移転させるほどの敷地が無いので、
さすがに今回は厳しいでしょう。
成功に近道なし!
と、このような戦術で青い森鉄道は何とかギリギリ黒字を出していますが、
無論、これは小手先のテクニックだけでどうにかなるものではありません。
これまで色々解説してきた通り、
上下分離方式を採用したり、貨物調整金を増額させたり、県立高校を駅チカに移転させたりと、
1つではなく複数に上る戦術を駆使してようやく青い森鉄道も黒字化出来たわけです。
言い換えれば、「成功に近道なし」ですね。
勿論、これは鉄道経営に限らず、
勉強や部活の試合でも通用する話ですよね。
成功するためには地道な努力と工夫が必要であるということを、
青い森鉄道は教えてくれたのです。
ということで、
私も画面の前のあなたも、
何かの場面で成功をおさめたければ、
地道な努力と工夫を欠かさないようにすることが大切になりますね。
おまけ:決意表明
さて、私は青い森鉄道を例として鉄道経営を調査してきたわけですが、
この青鉄大研究会シリーズをやってきてふと思いました。
「そうだ、大学院行こう。」
まるで某オレンジ色の会社のキャッチコピーではありませんかww
今回は鉄道会社の経営戦略についてフォーカスしてきましたが、
ゆくゆくは地方自治やまちづくりとセットにして、
幅広い視野のもとで学んでいこうかと現状思ってはいます。
鉄道をはじめ公共交通の経営は、
まちづくりと切っても切り離せない関係にあるのは、
画面の前のあなたもご承知でしょう。
特に大手私鉄なんかはその姿勢が顕著に出ており、
線路を通すだけでなく駅周辺のまちづくりにも積極的に取り組んでいますよね。
このような感じで、大学院では公共交通経営とまちづくりの在り方について研究していこうかと思っています。
勿論、あくまでも今は「構想段階」であるため、
大学院に行くかは確定していません。
ただ、私自身研究熱心であること、
それに、様々なジャンルに精通する人からの教えを学ぶことで、
より知識が広がるのは間違いありません。
知識があればあるほど意見をどんどん出せるほか、
色々な場面で口出しをできるようになります()
そういった意味でも、
大学院に行く価値というのは思ったほど大きいのではないでしょうか?
具体的な日程はまだ決まっていませんが、
3~4年後くらいを目途に大学院を目指そうと思います。
ということで、約9か月にわたり青鉄大研究会をやっていきましたが、
いかがだったでしょうか?
青鉄大研究会シリーズはここまでとなりますが、
次の新しいシリーズを現在考えているので、
少々お時間を頂ければと思います。
最後まで青鉄大研究会シリーズをご覧いただき誠にありがとうございました。
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