JR東日本などの鉄道会社の多くは、
各駅の乗車人員データを毎年7月に公表しており、
情報の開示に積極的である。
乗車人員は、
1日における平均的な各駅の利用状況を具体的に示してくれるため、
サービス向上など様々な場面で役立つデータなのである。
一方、我が青森県の第三セクター鉄道である青い森鉄道では、
乗車人員の公開は毎年しておらず、
沿線の各自治体が独自で調査したものが時たまホームページで掲載される。
ところが、以前に青森市における青い森鉄道の各駅乗車人員データを確認したところ、
ある不自然な点を発見したのでご紹介したい。
利用者数データは鉄道会社によって異なるのでよく確認する必要がある?
その前に、こういう駅の利用者数データの公開に関しては、
鉄道事業者によってその公開の仕方が異なる。
というのも、利用者数は「乗車人員」もしくは「乗降客数」かに分類されるためである。
利用者数データを公開する際における規定というものは存在しないが、
鉄道会社によっては公開の仕方が異なっているため、
他線区と比べるような場合は注意が必要なのである。
例えば、A社は乗車人員を公開している一方、
B社は乗降客数を公開していたとする。
その点を認識せずにそのまま両者の駅を利用者数ランキングにすると、
A社の駅ばかりが上位にランクインしてしまう。
乗車人員というのは、
当然ながら列車に乗る客数のことであり、
乗降客数はそれに加え降りる客もカウントしているため、
必然的に乗降客数のほうが多くなる。
この点を考慮していないとランキングに不公平が生じてしまい、
統計データとし不十分になってしまうのだ。
また、一番厄介なのが、
何も断りなしにただ”利用者数”と資料に書かれている場合。
乗車人員なのか乗降客数なのかがハッキリしないため、
他線区と比べたくても比べられないのである。
青い森鉄道の不自然な利用者数データとは?
では、青い森鉄道の利用者数データとは、
一体どちらの統計なのだろうか?
という資料に載っているデータを見ると、
こちらは乗車人員と書かれているのが分かる。
これはこれで良いのだが、
問題はウィキペディアのほうだ。
主要駅を中心に、
鉄道会社のホームページだけではなく、
ウィキペディアでも利用者数のデータが掲載されている場合が多い。
まず、2019年11月時点の上記のページで、
青い森鉄道青森駅における2013年(平成25年)の1日平均乗車人員データは1,626人と載っているのが分かる。
しかし、パソコン版にして一番上にある「履歴表示」を押して、
2018年のバックナンバーを見ていただきたい。
そうすると、
同じ年度の乗車人員データなのにこちらは3,257人と記載されているのが分かる。
比べてみると全然違うではないかw
数値が全く違うので打ち間違い(タイピングミス)とは考え難いし、
鉄道会社から公開されるデータは基本的に1種類がほとんどである。
なぜこれだけ違っているのだろうか?
因みに、バックナンバーで記載された乗車人員データは、
「統計からみた青森市(平成27年5月)」という資料を参考に作成されている。
ところが、この資料は既にリンク切れになっており、
現在アクセスすることが不可能となってしまっている。
実は以前まではアクセス可能だったのだが、
いつの間にかリンク切れになっていたのだ。
「統計からみた青森市(平成27年5月)」で掲載されていたものは、
確か「利用者数」としか書かれていなかった記憶があるが、
残念ながら手元になく、
しかもうろ覚えなので100%の自信はない。
だが、この点も不自然に感じると思わないだろうか?
そもそもこの資料がリンク切れになる理由が見当たらない。
仮にリンクが変わっていたとしても、
それ以前に公開された他の資料は今でもアクセスできるのだから、
なぜ「統計からみた青森市(平成27年5月)」だけがアクセスできないのか?
全く答えが見いだせない・・・
ここまでの不自然な点をまとめると、
1つ目はウィキペディアにおいて、
最新版とバックナンバーで乗車人員データが大きく異なる点。
2つ目は、「統計からみた青森市(平成27年5月)」という資料がなぜかリンク切れになっている点である。
考えられる要因は2つほどある?
未だ答えが不明なので、
ここでは考えられる要因について2つ挙げてみるとしよう。
まず1つ目は、公開されたのは「利用者数データ」であるが、
見間違いで「乗車人員データ」としウィキペディアに載せてしまったケース。
先ほどの青森駅の場合においても、
最新版は1,626人なのに対し、
バックナンバーでは3,257人となっている。
基本的に乗車人員は、
乗降客数を2で除した数値として扱われるため、
計算すればほぼ一致する結果となるのが分かるだろう(多少の差はあるものの)。
また、国土数値情報(駅別乗降客数データ) という国土交通省が公開しているデータがあるのだが、
今度は隣の筒井駅を見ていただきたい(青い部分をクリック)。
これと筒井駅のバックナンバーの乗車人員データを比べると、
見事に数値が一致しているのが分かる。
しかし、上記のリンク先は、
各鉄道事業者が集計したものを国土交通省のサイトにおいてそのまま掲載しているため、
鉄道事業者側に要因がある可能性も否定できない。
次に2つ目は、青い森鉄道側が算出した乗車人員データが、
実は“ある1日だけを対象”にして統計をとったケース(「統計からみた青森市(平成27年5月)」のデータが正しいことが条件)。
⻘森市地域公共交通網形成計画(平成30年3月)16ページに掲載されている、
青い森鉄道の乗車人員データをよく見ていただきたい。
そのうち横棒グラフの平成25年度に注目してほしい。
平成25年度は、
西暦で言うと2013年度であり、
2013年4月から2014年3月を指す。
一方筒井駅のデータは374人と書かれているが、
筒井駅が開業したのは、
ダイヤ改正があった2014年(平成26年)3月15日である。
したがって、少なくとも平成25年度におけるデータは、
2014年(平成26年)3月15日~31日のいずれかと特定できる。
4月1日からは2014度になってしまうため、
374人と算出される対象日はこの時点で終わっている。
一方、資料上図の「⻘森駅 1 ⽇当たり乗⾞人数」において、
「*H22 の⻘い森鉄道線利⽤者数は平成 22 年 12 月 4 ⽇からの平均」と記載されているのが分かる。
青い森鉄道が青森まで開業したのは平成22年12月4⽇であるため、
それ以前の日は対象外である。
ということは、それを踏襲して「⻘い森鉄道各駅 1 ⽇当たり乗⾞人数」にも、
“平成25年度の筒井駅の利用者数は2014年(平成26年)3月15日からの平均”と書くべきだが、
その注釈がどこにも記載されていない。
もし”ある1日だけを対象”にして統計をとったのであれば、
たまたま通学利用が少なかった日(土日や長期休み等)である可能性も否定できない。
果たしてどちらの推測が正しいのだろうか・・・?
なお、これまでの論は「統計からみた青森市(平成27年5月)」のデータが正しい場合に成立するが、
この資料さえ見つかればすべてが解決するのだが、
やはりリンク切れになっていて手も足も出ない()
いずれにせよ青い森鉄道の利用者数は増えている?
複雑で分かりづらいことを長々と書いてしまったが、
それ以前に青い森鉄道全体的な利用者数はここ最近増加傾向にあることは確かだ。
項目/駅名 | 青森駅 | 筒井駅 |
平成28年度乗車人員合計(人/日) | 1,814 | 560 |
平成30年度乗車人員合計(人/日) | 2,428 | 796 |
上記の表は、
平成28年度と30年度における青森駅と筒井駅の1日における乗車人員データであるが、
両駅の乗車人員は2年間のブランクがあるものの爆増しているのが分かる。
青い森鉄道では利用者数増加のために、
色々と工夫して打つ手を考えているようだ。
果たして今後どこまで数値を伸ばせるか?
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