前回の青鉄大研究会では、
青い森鉄道の線路使用料減免における青森県の累積負担額を露にしました。
それによると2002年の開業から2016年までの13年間にわたり、
実に50億円以上もの線路使用料の負担を青森県は強いられてきたことが明らかとなっています。
しかしこのままでは青森県の財政をひっ迫しかねません。
そこで青森県はある作戦を練ることになったのです・・・
これまでの振り返りになりますが、
「上下分離方式」の関係により、
青い森鉄道の線路は青森県の所有物となっています。
青い森鉄道自体は青森県が保有する線路を借りて列車を走らせているので、
青い森鉄道は毎年青森県に対して使った分の線路使用料を支払わなければなりません。
しかし、線路を借りて列車を走らせているのは青い森鉄道だけではありません。
・・・そう、あのJR貨物も線路を借りて列車を走らせているのです。
青い森鉄道の区間は北海道と本州を結ぶ重要なルートであるため、
1日あたり約50本もの貨物列車がバンバン通過していきます。
貨物列車は1本あたり20両編成前後という長さの列車が毎日50本も通過するということから、
その分線路のメンテナンス作業が欠かせません。
ということはJR貨物からも青森県に対して相当な額の線路使用料を支払っているのか・・・?
東奥日報の報道によると、
2014年度の実績ではJR貨物が青森県に対して支払った線路使用料は36.4億円。
しかし、この額では青森県の負担を軽減させることは厳しいというのです。
青森県は青い森鉄道の線路を維持するため、
毎年40億円に上る多額の費用を投じて保守と管理を行っています。
確かにこれだと4億円分足りないですね。
青森県によると旅客列車の本数からしてみれば、
いろいろと駆使することで単線非電化での運行も可能と言及。
複線電化という高コストで線路を維持してきたのは無論JR貨物のためであり、
逆に言えばJR貨物が要因で青森県は多額の負担を強いられてきたのだと・・・・
ここへきて怒りの矛先をJR貨物に向けたのです()
もし単線非電化されたらJR貨物にとってはかなりの不都合。
その事態を回避しようと貨物列車を奥羽本線経由での運行を一時期検討していましたが、
やはりこちらもこちらで単線区間が多いので断念。
青森県側の言い分の裏を返せば、
「JR貨物が線路使用料を多く支払わないと単線非電化にして貨物列車を通せなくするぞ!」
という感じです。
JR貨物にとっては半分脅迫状みたいなものになっていますが・・・
勿論、合法的な範疇での話なのでご安心ください()
この経緯などについては次回詳しく解説します。
さらに2016年の北海道新幹線開業が追い打ちとなり、
青い森鉄道を通過する寝台特急北斗星およびカシオペアなどがすべてBANしたことから、
その分におけるJR東日本から懐に入っていた線路使用料4億円相当がこれを機に消滅してしまったのです。
経営に余裕がない青い森鉄道にとっても4億円が入らなくなるのはかなりの痛手。
そこで2016年国は新たな支援策として、
従来の「貨物調整金」31.7億円(2014年実績)に加え、
新たに10.6億円の増額を発動させました。
この貨物調整金というものは、
国が出資している鉄道・運輸機構という会社からJR貨物に対する支援額のことを意味します。
JR貨物も並行在来線である青い森鉄道に対して毎年線路使用料を支払わなければならないので、
その分の支援額として国がJR貨物に支払っているのです。
分かりにくいので図で示すとこんな感じ↓
※黒文字は2014年度実績、青文字は2016年度新規
つまり国は貨物調整金の交付によって、
実質的にJR貨物と並行在来線の両方を支援していることになります。
寝台特急廃止により4億円の収入が消滅する予定だった青い森鉄道ですが、
青森県が奮発したことで貨物調整金が新たに10.6億円発生することになり、
JR貨物の懐を経由して実質6.6億円分の猶予が出来たというわけです。
図のように青森県には2014年度実績で36.4億円の線路使用料がありますが、
2016年には新たに青森県へ4.6億円、
これとは別に青い森鉄道にも6億円の収入が入ることになりました(これについても次回以降解説)。
一時期は県議から「許容範囲を超えた」「県の将来がとんでもないことになる」
と怒りの声が上がりまくっていたようですが、
この貨物調整金増額で何とか青森県の負担を5分の1(1億円)に抑えることが可能になったとのことです。
なかなか入り組んだ話になってきましたねw
コメント