ということで昨日の内容に引き続き、
JR貨物が支払う線路使用料の実態について解説していきます。
しかしながら前回は複雑な内容かつ計算量が多かったこともあり、
「一体何を言っているんだ?w」
と感じた方もいるかもしれませんが、
つまるところJR貨物が並行在来線事業者に支払う線路使用料が少なすぎるという結論に至るのです。
前回試算した線路使用料のうち、
線路保存費及び電路保存費における、
「列車キロ」「車両キロ」「換算車両キロ」「パンタグラフキロ」
を算出するための4つの式をもとに、
JR貨物が支払う線路使用料の負担比率を暴いていきました。
それによると青い森鉄道の場合におけるJR貨物の負担比率は、
列車キロでは45.9%なのに対し、
車両キロでは89.8%のギャップがあることが判明しましたね。
これは貨物列車のほうが連結する車両数が圧倒的に多いのでこうなっています。
そして前回載せた表の通り、
修繕費のうち固定費については旅客列車と貨物列車との列車キロの比率で求められるので、
JR貨物の負担比率はわずか45.9%に過ぎません。
同じく修繕費のうちトロリ線についてはパンタグラフキロの比率で求められますが、
何とこちらはさらに低い29.8%しかないではありませんかw
他社の線路をふんだんに使っているにもかかわらずJR貨物の負担比率が異常に少ない。
これが一番の問題なのです。
特に青い森鉄道(事実上青森県オーナー)は、
全国の並行在来線事業者のうち営業キロが最も長いため、
その分県の財政がひっ迫されるとして怒りの矛先をJR貨物に向けたのです()
一方、修繕費のうち変動費における車両換算キロですが、
こちらに限ってJR貨物の負担比率は、
他の費目と真逆である99.0%という驚異的な数値となっています。
しかし、前回の通り、
JR貨物にとってアボイダブルコストルールは有利になるのだから、
これだけ負担するのはおかしくないか?
と思ってしまいますが、
実はこれにはからくりがあります。
では、なぜ修繕費のうち変動費だけJR貨物の負担比率がやたら高いのでしょうか?
それは、変動費がほとんど存在しないためです。
先述の通り修繕費は固定費と変動費の2つに分けられていますが、
梅原氏によるとそもそも修繕費自体は大多数が固定費に含まれるものであるとみられているためです。
よく考えてみてください・・・
例えば喫茶店を運営する場合でも固定費と変動費は存在しますよね。
固定費は水道光熱費や人件費など、
売上の増減にかかわらず一定額のコストが発生する上、
設備を使っていなくても減価償却費は必ず発生します。
減価償却費はここで言うと線路保守になるので、
嫌でも保守にかかる費用を出さなくてはなりません。
一方変動費というのは売上の増減によって変動するものであり、
原材料費、仕入原価などが該当します。
しかし線路保守における変動費にはJR貨物にとって何があるでしょうか?
線路を使った分原材料費や仕入原価が増えるもの・・・
その都仕入れ度客に食事を出す飲食店と違って、
1回列車が走れば線路を取り換えるわけではないので、
イマイチ思いつきませんよね。
基本的に鉄道の売上が増えても線路の変動費は必ずしも増えるわけではありませんし、
それよりも列車走行による線路の摩耗により固定費として減価償却費が挙げられるはずです。
定期的にメンテナンスを行うものの、
人件費といった固定費ほど膨大な費用が掛かりません。
青い森鉄道の線路は重量が重い貨物列車が1日50本前後も通過するため、
その分メンテナンスにかかる人件費が多く発生するのです。
なので額が少ない変動費だけをJR貨物が負担するのは不合理であると、
青い森鉄道をはじめ各地の並行在来線事業者は不満を募らせているのです。
そこで並行在来線事業者を支援するために国が発動させたのが、
あの貨物調整金ということになります。
貨物調整金はアボイダブルコストルールに上乗せすることで、
並行在来線事業者に相当額のカネが行き届く仕組みになっており、
並行在来線事業者の経営が幾分かは改善されるようになったのです。
加えて、これまで線路使用料支払いにあたっては変動費だけの按分(基準となる数量に比例した割合で物を割り振ること)を対象として計算していたものを、
固定費部分も加味してJR貨物が支払うようになりました。
しかし青い森鉄道は営業キロが最も長いこともあり、
それではまだ満足できない・・・
ということで2016年の北海道新幹線開業のタイミングで、
事実上のオーナーである青森県に対し貨物調整金を増額させ、
加えて機関車交換作業増加による支援のため、
直接青い森鉄道側にも貨物調整金が入ってきたということになるのです。
かなりカネにがめつい話になってきましたが・・・()
ここまでの流れ、お分かりいただけたでしょうか?
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