【議論白熱】青森統合新病院 整備場所問題まとめ セントラルパークvsスケート場

地域経済研究

2021年より白熱の議論が進められている、

青森統合新病院問題。

青森市内にある青森県立中央病院と青森市民病院を統合し、

新たな病院を整備する計画である。

ここでは、今日までの最新の主な情報をまとめたものを解説するが、

情報が入り次第都度更新していく。

これまでの主な経緯

2021年11月:青森県立中央病院と青森市民病院の在り方検討協議会設立

2022年12月:整備場所検討(旧県立青森商業高校及び青森県立中央病院敷地、青森県総合運動公園、青い森セントラルパークの3案浮上

2024年5月:上記3案に加え、外環状線エリア(国道7号)が追加

2024年7月:青い森セントラルパーク及び浜田中央公園・県営スケート場周辺(青森県提案)の2案に絞られる ※青森市は後者案を現状受け入れていない→同年9月に案を容認

2024年8月:開院目標時期を2032年10月に決定

2024年9月:整備場所を県営スケート周辺に決定

そもそもなぜ統合するのか?

引用:県と青森市の共同経営・統合新病院整備について – 青森県立中央病院

青森県立中央病院と青森市民病院。

いずれも県都青森市における中核を担う総合病院であるが、

そもそもなぜ両病院は統合する必要性があるのだろうか?

主な理由としては以下の通りである↓

  • 人口減
  • 高齢化
  • 医療従事者不足
  • 両病院老朽化
  • 振興感染症リスク
  • 経営難

人口減少や高齢化、

医療従事者不足、それに病院の経営難は、

どの地域においても共通の悩みであろう。

特に青森県は人口減及び高齢化が全国でもトップクラスであり、

その深刻っぷりは半端ない状況。

無論、青森県立中央病院及び青森市民病院においても同様であり、

以前から上記の課題を抱えているのが現状。

更に、上表の通り、

いずれも開院からそれぞれ39年、35年経過しており、

建物の老朽化が進行しているのも理由の一つだ。

これらの事情により、

いっそのこと両病院を統合し、

昨今の社会情勢及び経営効率化を見越して、

新病院を整備しようという思惑である。

整備場所候補一覧

統合新病院の整備場所にあたっては、

以下の4項目を考慮したものとなっている↓

  1. 医療機能の高度化や療養環境の充実など、整備に必要な面積が確保できること。
  2. 津波や洪水などによる大規模災害発生時においても、診療に重大な支障をきたさないこと。
  3. 工期短縮及び費用削減の観点から、既存建物が無く、確保が容易な土地であること。
  4. 圏域内外からの救急患者の搬送や患者の通院アクセスに適していること。

上記4項目を考慮したうえで、

2024年5月時点で整備場所案が挙がっているのは以下のエリアである↓

  1. 旧県立青森商業高校及び青森県立中央病院敷地
  2. 青森県総合運動公園
  3. 青い森セントラルパーク
  4. 外環状線エリア(国道7号)
  5. 県営スケート場周辺(青森県提案)

1~3については当初より整備場所候補地として挙げられており、

ここでは「既存3案」と明記する。

4については2024年5月に、

5については2024年7月にそれぞれ候補地として挙げられたが、

5に関しては現状、

青森市側が受け入れていない体制となっている。

尚、1と2、4に関しては、

県営スケート場周辺(青森県提案)が候補地として挙がって以来、

議論の対象から外された模様(完全に絞られたかは定かではない)。

それを踏まえて2024年7月時点では・・・

  1. 青い森セントラルパーク
  2. 県営スケート場周辺(青森県提案)

の2案に絞られ議論が進められている。

既存3案の各整備場所候補観点別メリット・デメリット

①災害リスク

地震においては、

有力候補の一つとなっている青い森セントラルパークが、

最大震度6弱の想定となっている。

他2案は最大震度6強となっているため、

やや有利の立場にある。

津波については、

旧県立青森商業高校及び青森県立中央病院敷地が唯一、

最大浸水水位が4.4mとなっており、

他の候補地と比べ不利な状況である。

洪水については、

旧県立青森商業高校及び青森県立中央病院敷地が一部浸水(0.8m程度)、

青い森セントラルパークが浸水(0.8m)となっており、

青森県総合運動公園がやや有利。

②救急搬送の面

救急車到達圏人口では、

旧県立青森商業高校及び青森県立中央病院敷地が最も少なく、

青い森セントラルパークが最も多い。

やはり市中央部に位置する青い森セントラルパークが、

青森市の人口の約7割をカバーできている。

救急搬送経路を見ると、

現状の旧県立青森商業高校及び青森県立中央病院敷地が、

他2案と比べ比較的シンプルであり、

渋滞が分散されるような構図となっている。

③通院アクセス

各整備場所最寄りのバス停発着本数では、

旧県立青森商業高校及び青森県立中央病院敷地が、

国道4号を通る路線バスが基幹ルートとなっている関係で、

229本と圧倒的に多い。

尚、それぞれ対象となっている最寄りバス停だが、

旧県立青森商業高校及び青森県立中央病院敷地は、

「県立中央病院前」及び「県立中央病院通り」、

青森県総合運動公園は、

「総合運動公園前」及び「県立美術館前」、

青い森セントラルパークは、

「サンロード青森前」となっている。

尚、仮に旧県立青森商業高校及び青森県立中央病院敷地以外に整備を行う場合、

路線バスの本数・系統を大幅に見直す必要があり、

その点を市民にどう説明していくか課題である。

最寄り駅では、

いずれの案も徒歩圏内に入っておらず、

歩いても20分を軽く超える距離。

特に青森県総合運動公園に関しては、

駅から大幅に離れており、

路線バスに頼らざるを得ない。

一方、青い森セントラルパークに関しては、

新駅設置が検討されているため、

実現するとなれば利便性が大幅に向上し、

3案の中で優位となるだろう(問題は本数だが)。

高速道路においては、

インターチェンジから最も近い候補地だと、

青森県総合運動公園が1.8kmで最も有利となる(最寄り:青森IC)。

④まちづくりの観点から

青森市が策定した立地適正化計画では、

旧県立青森商業高校及び青森県立中央病院敷地に加え、

県営スケート場周辺(青森県提案)が、

「生活拠点区域」に、

青い森セントラルパークが、

「都市機能誘導区域」となっており、

唯一、青森県総合運動公園は上記の策定区域から外れている。




最終2案:青い森セントラルパークvs県営スケート場周辺比較

2024年7月21日時点において、

青い森セントラルパークと県営スケート場周辺の2案に絞られた。

では、両者のメリット・デメリットを改めて見ていこう。

①まちづくりの観点から

まちづくりの面では、

いずれも立地適正化計画エリアに該当しており、

適していると言える。

一方、県営スケート周辺に関しては、

既存の3つの施設の移設が必要となるため、

それに伴う費用や期間を要することは避けて通れない。

更に7月30日付の東奥日報によれば、

サンドームに関しては国民スポーツ大会の会場となるため、

現在改修工事が行われている。

よって、それに伴う経費が水の泡になってしまうのでは、

といった懸念事項もある。

②災害リスク

災害関連については、

どちらも一長一短あると言った様相。

浸水想定については、

青い森セントラルパークが最大1.8m程度なのに対し、

県営スケート周辺は最大2.3mと、

後者のほうが水位が高いが、

いずれにせよ両者浸水のリスクがあるため、

現時点でどちらが優位であるかの判断は難しい。

③通院アクセス

通院アクセスについては、

青い森セントラルパークにおいては市中心部に位置するため、

平等な立ち位置にある。

加えて、新駅設置も検討されているため、

アクセス性においてはこの案件によって大きく変わるだろう。

問題は道路状況と路線バス網の見直しといったところだろうか。

特に青い森セントラルパーク周辺の道路は、

幹線道路に接していないため、

渋滞が懸念される。

青森市総合体育館でイベントが開催されるのをセットに考えると、

そのリスクは大きいものであると思われる。

更に、八甲田大橋から分岐して直接アクセスするための道路整備、

それに付随する形で橋全体の架け替えが必要になってくると、

かなりの費用を要することになる。

一方、県営スケート場周辺については、

青森中央IC接続のアクセス道路を整備する計画となっており、

他圏域からの救急搬送の面においても有利となる。

ただ、既存の施設や建造物の移設が必要不可欠になってくるため、

現時点での情報ではこちらも甲乙つけがたい。

④その他:騒音問題等

その他、ドクターヘリ関係の問題が挙げられる。

いずれも周辺は住宅街に近いため、

騒音問題は勿論のこと、

青い森セントラルパークに至っては、

周辺に青い森鉄道の線路と八甲田大橋が通っているため、

ヘリポート整備において障害となる可能性があるということだ。

⑤費用面

費用面においては大きな差が開いている。

青い森セントラルパークが323億円以上かかる見込みなのに対し、

県営スケート周辺は163億円と、

後者のほうが約2分の1程度にまで費用を抑えられることが判明した。

これについて青森市側は、

青い森セントラルパークにおける八甲田大橋の架け替え、

及び新駅設置・自由通路整備だけで、

215億円以上かかっており、

従来の渋滞対策とは「直接関係ない話」と強調。

あくまでも将来的には必須であるが、

現時点では道路拡幅などの対策をすればよいとのこと。

要は、統合新病院整備にあたり、

青い森セントラルパーク案では、

橋と駅の整備費用が盛り込まれていることに、

疑問を呈しているというニュアンスである。

開院時期はいつか?

統合新病院整備にあたり、

当初では令和5年度中をめどに基本構想計画を策定するつもりだったが、

お察しの通り整備場所問題で混沌としている影響により、

1年ずれ令和6年度中に変更された。

よって、開院時期は上表の通り、

令和12年3月頃を目途に整備を進めるようだ。

このように、県都の中枢を担う総合病院であるため、

早急な開院が望まれる。

★2024年9月更新★

開院目標時期を令和14年(2032年)10月頃に遅らせることを表明。

整備場所はスケート場周辺に決定(2024年9月)

2024年9月16日に開かれた宮下知事と西市長による会談、協議の結果、

整備場所をスケート場周辺とすることが決定。

当初は有識者会議において青い森セントラルパークが有力視されていたが、

二転三転の議論の末、

最終的にスケート場周辺が望ましいとし多数決で決まった。

青森市側はコンパクト・プラス・ネットワークの街づくりの観点から、

青い森セントラルパークを推進していたが、

市外からの通院アクセスや救急搬送の面(高速道路のICが近いのも理由の一つ)を考慮し、

青森県側が提示したスケート場周辺案に歩み寄る形で、

約3年にわたる議論にピリオドが打たれた。

尚、既存のスケート場やサンドームは解体後、

青い森セントラルパークへまるごと移転することとし、

青森市が同時に推進していた、

青い森鉄道の新駅設置計画と引き換えに、

今回の統合新病院整備場所問題が決着した次第である。

青森県としても今後、

青森市と連携し新駅設置へ向け連携していくとのこと。

スケート場やサンドームが青い森セントラルパークに移転するとなれば、

既存の青森市総合体育館と相まって、

周辺はまさに「スポーツ都市」へと大きく変貌するであろう。

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